バスキアの女性関係
アメリカのグラフィックアートで有名な夭折画家 ジャン＝ミシェル・バスキア（Jean-Michel Basquiqt）。
日本では一般的に知られていなかった現代美術家であったが、2017年、ZOZOの前澤友作氏が、1982年のバスキアの作品を「Untitled」123億円で落札したことで知名度が高まった。
バスキアは、たった27年間という短い人生で残した作品は3,000点を超える数で作品点数は膨大なものであるが、女性関係も数多かったと言われている。
実際、バスキアが付き合った女性たちと、なぜ関係が長続きしなかったのかということをエピソードを加えて紹介します。
アレクシス・アドラー 1979年
「OLIVE OYL」とアレクシス・アドラー 2014年撮影
Basquiat female relationship No.1
1979年、公園で寝泊まりし、ハンドメイドのポストカードやTシャツを売って生活していた19歳のバスキアは、アレクシスと出会う。
アレクシスはバスキアより3つ年上（22歳）で、生物学を勉強する学生。
友人の開いたクラブのパーティから帰宅する際に、アレクシスが間違って他人の車のドアを開け、マフィア風の車の持ち主が怒って追いかけてきたところを、バスキアが助けてくれたそうです。
それがきっかけとなり、バスキアとアレクシスはイーストビレッジのアレクシスの小さな6階建てのアパートで一緒に暮らし始めた。
バスキアとアレクシスが暮らしたイーストビレッジのアパート。現在は高級アパートへリメイク。
同居生活は混沌としたものでした。バスキアはあらゆるに物に何かを加え、再考し、再配置していました。
壁、冷蔵庫、床、本は絵の具で塗られ、家具は朝起きると配置が違っていました。
また、アレクシスのお気に入りのコートも「とても美しい」という理由でペイントされました。
バスキアがペイントしたアパートのドア 1979
バスキアとアレクシスは親密な関係で、共通点は多かったのですが、別々の寝室と生活がありました。
アレクシスは生物学研究所で働き、バスキアは一晩中絵を描いて音楽を聴いていました。
そして、お互い別の「男女の関係」もありました。
「私たちは毎晩出掛け、毎晩薬を飲んで、友達に会い、音楽に合わせて踊りました」とアレクシスは回想しています。
「当時芸術家としてダウンタウンにいたら、セックス、ドラッグ、ロックンロールが全てでした。」とも語っています。
この同居は複雑過ぎて、1年後には、バスキアは彼女のアパートを去りました。
しかし、バスキアとアレクシス友人のままであり、バスキアが正式にアンディ・ウォーホルと仕事をするようになると、アレクシスに友人の男性を紹介したりしていました。
アレクシスはバスキアが出ていった後も同じ部屋に住み、バスキアが残していった数々のバスキア作品を所有していました。
何点かはササビーやクリスティーズでのオークションに出店していますが、未だ100点以上の作品がアレクシスの手元にあります。
現在、アレクシスはユダヤ系アメリカ人と結婚し、2人の子供の母親である。
マドンナ 1980年代前半
Basquiat female relationship No.2
バスキアがアレクシスと一緒に住み始めた頃、ダウンタウンの「マッド・クラブ」の常連で、マドンナはクラブのダンサーでした。
このクラブはデイヴィッド・ボウイ、ミック・ジャガー、アンデイ・ウオーホルなどのセレブも出入りしていました。
マッド・クラブの店先に群がる人々 1979
バスキアはマドンナを作品にしたりして、二人の関係は良好のように見えましたが、破局は簡単なものではなかったようです。
「彼はヘロインをやめるつもりがなかった。彼は素晴らしい人で、すごい才能の持ち主で、彼を愛していたの」と、マドンナはラジオ番組「ハワード・ スターン・ショウ」に先日出演した際に語っている。
「彼と別れる時、（彼が贈ってくれた）絵を私に返させたの。そして、彼はそれらの絵を黒く塗りつぶしてしまったのよ」
マドンナは1980年代前半に交際していたジャン＝ミシェル・バスキアとの写真をインスタグラムに投稿している。
写真は動画形式になっていて、写真にハートが降り注ぐものとなっている。
ジャン＝ミシェル・バスキアは1988年8月12日、ヘロインのオーヴァードーズによって27歳の若さで亡くなっている。
マドンナとジャン＝ミシェル・バスキアとのインスタ画像はこちら。
マドンナは先日、レディー・ガガが映画『アリー／ スター誕生』についてのインタヴューで自身の過去の発言を引用しているとして彼女を批判している。
スザンヌ・マルーク 1981年
バスキアとスザンヌ・マルーク 1981
Basquiat female relationship No.3
1981年、バスキアは、歌手でアーティストのスザンヌと同居をスタートします。
スザンヌは、パレスチナ出身でニューヨークのバーで働いていた頃、バスキアと出会います。
スザンヌは虐待を受け難民マイノリティなので、バスキアの黒人としての葛藤をとても良く理解していました。
しかし、この頃すでにバスキアはアーティストとしての知名度は高く、スザンヌは彼の芸術性を愛しながらも、バスキアの影の存在になることも恐れていたようです。
スザンヌは、バスキアの死後、薬物中毒に苦しむアーティストのカウンセラーとなりました。
ジェニファー・グッド 1983年
バスキアとジェニファー・グッド 1983
Basquiat female relationship No.4
ジェニファーは、ニューヨーククラブのオーナーの妹で、小道具の美術担当の仕事をしていました。
1983年に、ジェニファーはバスキアと出会い、一目惚れをしました。
4歳年上のジェニファーは、バスキアが誰なのかは知らなかったので、一緒に来たグループ全員の料金を支払う気前の良さに驚いたそうです。
初デートは、ジェニファーの母と妹と一緒に映画を観ました。
バスキアはとても恥ずかしがり屋だが、人種差別主義者に対しては猛烈に皮肉る性格でした。
ジェニファーは、バスキアの顔におできがたくさん出始めていたこともあり、中毒症状が見た目でわかることもあり、ドラッグをしていたことはすぐに気付いたそうです。
しかし、ジェニファーはガールフレンドになりたかったため、自分もドラッグを始め、翌年1984年、バスキアの家に住むことになりました。
ジェニファーとの付き合いは、バスキアの数ある恋愛のなかで、最も深刻で深いものであるとも言われています。
実は、ジェニファーはバスキアの子供を身籠りましたが、中絶をしているからです。
しかし、2年後にバスキアの薬物乱用に耐えられなくなったジェニファーは、別れを告げます。
バスキアは激怒し、部屋を破壊し、拳で壁に穴を開け、家具を壊しました。
彼が壁に標識の絵で傷ついた心を描いていたこともわかっています。
そしてその後、バスキアはますます引きこもるようになり、彼の身体がボロボロになっているのが、誰の目から見ても明らかだったそうです。
ケリー・インマン 1987年
バスキアとケリー・インマン 1987
Basquiat female relationship No.5
1987年から付き合っていたと言われる5歳年下のケリー・インマン。ジェニファーと別れてからバスキアの家に一緒に住んでいました。
このときのバスキアは、ケリーといるときは笑顔が多く、彼女をモデルにして写真作品を撮っています。
ケリーに着せるドレスをパリのデザイナーにオーダーした際には、自分の作品と交換したとか。
バスキアの最後の恋人とされ、1988年8月、彼女がバスキアの死を発見しています。
バスキアの不安定で惑乱の恋愛
バスキアの恋愛は、作品のように多数にわたり、どれもが精神肉体と同じく不安定な関係でした。
芸術面で黒人としてのコンプレックスを持っていたバスキアは、黒人擁護の立場をとっていながらも、プライベートで付き合う女性に有色人種はいませんでした。
バスキアは、幼い頃からバスキア自身の才能を見出し、支えとなってくれた母親を愛し尊敬していました。
母親と早く別れたことで、常に女性と一緒に暮らすことを求めて母親の愛情が欲しかったのではないかと想像されます。
しかし、バスキアは、母親が精神疾患を患っていたので、女性に対しての恐怖があったことも拭いきれないところもなかったとは思えません。
バスキアは、短い人生（27年間）の中で芸術家としての大成功を収め、美術史に名を残すことになりました。
女性とも後悔することなく、多くの女性を経験し、ミューズとして才能を伸ばすこともできたことと思われます。
しかし、その多くの恋愛の中で、ひとつでもバスキア自身が、真実に求める愛を得られたかどうかは、定かではありません。
バスキアの女性関係まとめ
バスキアの女性関係を時系列にまとめてみて、改めてバスキアの作品が世に広まるまでの期間がとても短期間で誕生していることにびっくりさせられます。
また、有名になるスピードも尋常ではなく、女性関係も大きく変化していくところにも、とても興味深いところではないかと思われます。
この最後のまとめの時系列表を眺めていると、少しだけバスキアの人生、このWEBサイトのタイトルでもあります「バスキア・ライフ」が見えてくるのではないかと思います。
| バスキア年齢（状況） | 期間 | 女性 |
|---|---|---|
| 19歳（ホームレス） | 1979年〜1980年 | アレクシス・アドラー（生物学専攻学生） |
| 20歳（アーティスト） | 1980年〜1981年 | マドンナ（当時、クラブダンサー） |
| 21歳（知名度の高いアーティスト） | 1981年〜 | スザンヌ・マルーク（歌手・アーティスト） |
| 23歳（知名度の高いアーティスト・重度のドラッガー） | 1983年〜1985年 | ジェニファー・グッド（ニューヨーククラブ・オーナーの妹で小道具の美術担当） |
| 27歳（知名度の高いアーティスト・重度のドラッガー死亡） | 1987年〜1988年8月12日 | ケリー・インマン（最後の恋人） |